「著作権」という物が流行りだしてしまったけど、字を見ただけでは(中身が)分からないんだよね。
–:持ってきた質問に答えてもらったけど、全体的な感想はどう?
谷井精之助(以下・谷井):こういう疑問が出てくるっていうのは良いことなんだよ。疑問が出てこなければ知らないうちに(著作権侵害を)やってしまうのだから。
–:見た感じで言えば、「著作権」という名前が先行してますよね。
谷井:つまりね、「著作権」という物が流行りだしてしまったけど、字を見ただけでは(中身が)分からないんだよね。
–:「著作者の権利」と理解されていて、これが行き過ぎて「何にでも著作権がある」と思われてしまう。
谷井:著作権の発生する著作物とはどういう物か?というのは当然法律で定めてあって、著作物って言うのは「思想または感情を創作的に表現した物であって、文芸・学術・美術・または音楽の範囲に属する物を言う。」とされている。こういう著作物に発生する権利が著作権。法律上で言う著作物とはこういう物で、それ以外の著作物は法律上では著作物とは認められない。
–:著作したから「著作権のある著作物」とは限らない。
谷井:そう。そして「思想または…」の思想なんだけど、宗教的であるとか右翼・左翼などに代表されるような「思想」である必要はなく、「それが思想か?」という物で良いんだ。「考えたこと、感じられたこと」と言うのが「思想または感情」という事なんだよね。問題は「創作的に表現した物」。つまり、著作権とは「表現」に発生する権利だから、その表現が「独自の物」なのか「真似」なのかと言うところで、発生するかどうかが決まってしまう。
「独特の表現」が含まれてくれば発生してくることになる。
–:「日記」「ニュース・情報」については?
谷井:一概には言えないなぁ。この前「三島由紀夫の日記」が問題になった。当然「今日は雨が降った」とかにはね、ないけど。
–:「今日○○ちゃんと会って、こういう事があった。」には無いけど、「そのとき私はこう思った。」となってくると当然発生してくる可能性がある?。
谷井:そうだね。-
-:ニュースについては?
谷井:事実だけを伝えている場合には無いが、そこに「独特の表現」が含まれてくれば発生してくることになる。「ルポルタージュ」なんかはその代表的な物だね。新聞の記事であっても「独特の表現」があれば危ない。
–:「著作物としての判定」という物は非常に難しい。
谷井:難しい。
–:例えば作業手順などの「ソフトの操作法」についてなどは?
谷井:「独特なやり方だ」という事で、あるいは権利主張をすることあり得るけど具体的な法律はまずないね。
–:掲示板に質問と回答として複数の人が勝手に投稿した物は?
谷井:著作権的には無いよね。ただし解説自体が「その人独特の表現を用いてある場合」認められる場合もある。また「編集著作権」と言う物があって、編集者が独自の編集をした場合に認められる。例として「料理の作り方」に著作権は認められない。「表現」の問題だからね。
(社)日本著作権協議会 副理事長
谷井精之助
インタビュー・編集:(2000.1.30)